「やる気スイッチ」は、前頭葉(脳の前の方、おでこの上辺り)にあります。そして、体の中(しかも頭蓋骨の中)にあるので、他人には押せません。ということは、やる気スイッチは自分で押すしかないのですが、指で押すことはできません。では押す方法は?

 脳科学的には一つしかなく、「やる気スイッチを押したかったら、やる気を出す」しかないのです。禅問答のようですが、やるべきタスク(課題)をほんの少しでも始めてみると、だんだんやる気が出てくるという性質が脳にはあります。ですから、やる気がイマイチの時は、とりあえず目の前の課題を始めてみるのが一番効果的なのです。

 では、とりあえず始めてみるにはどうしたらいいのでしょう。

 目的地にたどり着くまでに、2mの高さの壁があったとします。毎日トレーニングをして、腕力の強い人であれば登れるかもしれません。もしくは、夢と希望に満ち溢れ、どんな困難にも立ち向かおうと考えている素晴らしい人であれば、挑戦しようとする気になるかもしれません。でも、普通の人ならどうでしょう。越えようとする気に少しもならないと思います。


 では、2mの高さの壁ではなく、10㎝の階段を20段だったらどうでしょう。これなら普段から上がっているレベルですし、簡単に2m上がれそうです。とりあえず2、3段上がると、「中途半端だし、折角だからもう少し上がるか」となりそうですよね。この性質を利用して、勉強でもなんでもハードルを下げて、ちょっとだけやってみるのです。

 ちょっと机でも片付けてみるかな。ちょっとプリントとかテキストの整理でもしてみるかな。ちょっと単語を5つだけ覚えてみるかな。ちょっと教科書を・・・。キーワードは「ちょっと」です。

 そういえば、最後に冒頭の言葉の続きを。

 「変われない」のではない。「変わらない」という決断を自分でしているだけだ。 アドラー「つい食べてしまった」のではない。「食べる」という決断を自分でしただけだ。