中学に入学して初めての体育の授業は鉄棒だった。小学校にはなかった、ジャンプしないと手が届かない高い鉄棒。その鉄棒を背にして先生は言った。
「この鉄棒を越えて向こう側に行ってください。越えられた者は、向こう側でしゃがむ。何回挑戦してもいい。どんな方法でもいい。飛び越えようが、大車輪しようが、とにかく上を越えれば
OK。では始め。」
最初に一人、さっさと越えてしゃがんだ奴がいたのは覚えているが、後はとにかく無我夢中だった。どうやって越えたかは覚えていないが、とにかく越えて、ほっとしたのを覚えている。

「やめ。」
授業も終わりに近づき、先生が言った。

「周りを見てごらん。運動神経のいい人だけが越えているか?越えられてない人は、運動が苦手な人ばかりか?」

確かに、越えた側にも越えられなかった側にも、運動が得意な人も苦手な人も同じように混じっていたと思う。
「じゃあ、聞くぞ。手を上げて。『こんなの無理だ、越えられない。』って思った人。」
越えられなかった生徒が、全員手を挙げた。

「じゃあ、『越えられる。何とかして越えよう』って思った人。」
今度は越えた側の生徒が全員手を挙げた。鉄棒を境にして、真っ二つに分かれた。それは見事だった。今でもその光景は鮮明に覚えて
いる。

越えようと思って、本気で取り組もう。

テキストの問題も、「解ける、覚えられる。」と思って取り組むのと、「多過ぎる、難しい、無理だ。」と思って取り組むのとでは、結果が大きく異なる。

そういえば、ワークに取り組む前に「できる、できる、できる!」と言ってから取り組むようにして、成績を上げた生徒が昔いた。

勉強の前に、言ってみよう。「できる、できる、できる!」